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 「・・・どういうこと?」

本書の中の、トピックの一例だ。この「いったいどういうこと?」という反応がある場合、興味がわく。その興味を持ち続け、尚且つ、楽しむ。そのような性格のあなた。もしかしたら、科学者に向いているかもしれない。本書は、誰もが知るお二人の対談から学ぶ、思考法の本である。では、これから思考法の旅へ出かけよう。

【本の概要】

ノーベル賞物理学者益川氏とiPS細胞で全世界の注目を集める山中氏の知的刺激に満ちた対論。世紀の発見、その時脳内で何が起きるか?(アマゾン内容紹介より)

 

 

【重要ポイント】

 

 

  • 1.「諦める」ということが最も重要な作業

 

益川:

そう。湯船の中で「4元モデルではうまくいかない」という論文を書こうと決心した段階で、4元モデルに対するこだわりがなくなったわけです。「だったら、なにも固執せず6でいったっていいじゃないか」と、自由な発想へスイッチできたと思う。(p36)

◆「CP対称性の破れ」の謎を解くカギは、クォーク(粒子よりさらに小さい物質の最終位)にあると考えていた益川さんは、当時の3種類のクォークではうまく説明できないため、もう一種類のクォークを加えることができればうまい理論ができると思い込んでいた。しかし、なかなか解決することができない。

◆そこで、一旦、4種類にこだわることを辞めたことで、新たな発想が生まれたのである。ちなみに、そこは、お風呂場であった。たしかに、一つの考えにとらわれすぎると、新しい発想が生まれなくなる。なぜなら、今行っていることで正解にたどり着けると信じているからだ。

◆私にもそのような経験がある。考えて考えて、答えがでない。諦めて、お風呂にでも入ってみる。すると、考えていたわけではないが、ふいにアイデアが浮かぶ。「本当の意味で諦める」というより、「答えは必ず出るはずだが、今は諦めよう」 と一旦、考えを寝かすことが大切であるのではないか。

  • 2.国語力は全ての基本

 

益川:

そう、科学の基本は国語ですよ。何にしてもすべて文章の言葉から入ってくる。読んでその世界が頭に思い浮かべられるかどうか。その力があれば、理解していける。そのあとは、吸収した知識を頭の中で思い描いて発展させていけるかどうか。(p59)

◆数学は「計算するもの」というイメージをもつことが多いが、数式は基本的に言葉であるという。よく、理系だから国語の勉強は必要ないと考える(逆も同じ)。しかし、結局、私たちは、文章から離れて成長することはなく、誰もが生きていく上で必要な国語力を問われるのだ。

◆こうして、読み終わった本から得た知識をインプットし、自分なりの言葉でアウトプットするためにも、著者のメッセージを正しく理解する国語力が必要である。記事にも影響するはずだ。

  • 3.一見無駄なことが大事

 

山中:

はたから見たら、僕の人生は、遠回りで非効率に見えるかもしれませんし、無駄なことばかりやっているように思えるかもしれません。もっと合理的な生き方が出来たんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そうやって回り道したからこそ今の自分があるんじゃないかと思います。(p78)

◆山中さんはアメリカ留学中、回旋型の社会に慣れていて、日本に帰国してから悩んだ時期があったという。日本は、未だに、「直線型の人生」が好まれる。私も「直線型の人生」を好む。しかし、結局、「直線型の人生」ほど、難しいことはない。一度も挫折せずに人生を歩むことは滅多にないからだ。

◆山中さんは、効率が最優先される社会は確かに大切としつつも、一見遊びに見えたりすることの中に、実は豊かなものや未知なるものがたくさん隠されているのかもしれない、と考える。「回旋型の人生」こそ無駄が多いと思われるかもしれないが、「回旋型の人生」こそ、自分のやるべきことに出会い、最終的に「直線型の人生」になると私は考える。

  • 4.ビックリできる感受性

 

山中:

科学者にとって感受性は本当に大切だと思いますね。自分のやった実験の結果を見て、「うわ、すごい!」って面白がれる人じゃないと、研究を続けていくのは、難しいと思うんです。そこで心からびっくりできる、感動できるというのが、研究者に必要な才能だと思います。(p90)

◆山中さんは、iPS細胞が出来た時も感動したが、自分でもある程度予測しており、本当の意味での驚きとは違うかもしれないという。むしろ、嬉しさや安堵のほうが大きかったそうだ。本当に心の底からびっくりして「面白い!」 と興奮したのは、今までの人生で二回。予想通りではないところに、とても面白いことが潜んでいるのが科学であるとし、素直に「あ、すごい!」と感じ取れることが大切だとする。

◆また、益川さんも、実験の結果が予想通りだったら、それは基本的に「並」の結果であるとし、予想外の結果を好む。そこで大切なことは「この予想外の結果は、いったい何なのだろう」と考え、ガッカリせずに、前に進むことだとしている。

◆科学者にとっての実験=私たちの挑戦。予想外の結果=成功までの経過途中。このように解釈することで、あなたもお二人のようなあなたなりの成果を出すことができるのではないだろうか。

  • 5.人間の考えることなんかより、自然の方が奥深い

 

山中:

だから、実験をするということには非常に大きな意味があるんですね。

益川:

人間というのは、常に既成概念の中でものごとを考えている。人間の考えることなんかより、ずっと自然のほうが奥深いんです。(p101)

◆コーラの実験の話題で、そのように発言している。とにかく、まずは実験をしようとのこと。既成概念が行動・発想などの邪魔をする。頑固な人ほど既成概念が強いと思われる。私もどちらかというと既成概念が強い。勝手に頭が「なんだかんだ最後はこうなる。だから意味がない」と解釈し、行動・発想が生まれにくい。おそらく、それは、既成概念が壊れる素晴らしい経験が乏しいからだろう。

◆今では、自分が経験していないことでも、簡単にネットや本で情報が手に入り、知識としてインプットされる。その知識が正しく解釈され、尚且つ、当たり前の知識としてとらえられた頭では、ますます既成概念を壊すことが難しいのである。

  • 6.思考の攪拌作用(かくはんさよう)

 

益川:

紅茶の中に角砂糖を入れて、そのまま放っておいてとけていかないけれど、軽く一回だけスプーンで回すと、すーっと溶けていく。それと同じように、ディスカッションを通じて自分以外の人が関わってくると、それまで自分の思考回路の閉じた部分でクルクル回っていた考えが、すーっと外に流れて行ってくれる。僕はそれを思考の攪拌作用と呼んでいます。人と話すことは、とても重要です。(p120)

◆益川さんの紅茶の例えがわかりやすい。そのまま放っておいても、最終的に自分で考え抜くことができる場合はあるが、自分の考えや相手の考えをでシェアすることで、より良い結果を得やすいのである。長い間、私はサッカーを続けてきたが、チームスポーツにとって自分の考えだけでプレーして良い結果を得られたことはほとんどなかった。もちろん、個人の考えでチームに頼らず、状況を打開することは時に必要だ。それは、チームの考えがシェアされていたにもかかわらず、なかなか状況が変わらない場合である。

◆自分の考えで切り抜けることはたしかにある。しかし、確実に、チームで考えをシェアして、プレーする方が良い結果を出した回数は多かったのだ。人と話すことで、得られる効用は大きい。もし、あなたが今、上手くいかないことがある場合、その考えを身近な人でもいいのでシェアしてみてはいかがだろうか。

  • 7.「VW」を大切にする

 

山中:

日本人は概して勤勉ですから、努力は得意だと思いますが、明確なビジョンを失いがちです。うちの学生を見ていても、そういう人が多いような気がします。夜遅くまで実験や論文書きや諸々の仕事に追われていると、「自分はすごく頑張っている」と思い込み、満足 してしまう。ふと気が付くと、何のためにその努力をしているのかわからなくなっている、ということも珍しくありませんよね。(p164)

◆この文章を読んだ際に、『あなたは「話をまとめる」ことが得意か』の感想記事で書いた内容を思い出した。私は、山中さんの言う、「うちの学生」に近い。まさに、この記事を書いている際もそうだ。長い文を書くことに美徳を感じている。なぜなら、多くの文章を書くことで、書くことに対しての抵抗を無くすことが出来ると考えているからだ。最終的には、量より質のある記事を目指す。

◆しかし、この最終的な目標は本当の明確なビジョンではないように思える。このOutputサイトでは、いくつかの目標を掲げている。サイトの趣旨に書いてあることだが、やはり、少し抽象的だ。明確なビジョンをもう一度考えていかなければならない。

 

 

 

 

【感想】

◆お二人に共通していることは、説明が難しいであろう、科学の話を分かりやすい例えで説明されていることである。「CP対象性の破れ」を風船で説明する益川さん。「転写因子」を栞(しおり)と表現する山中さん。私みたいに科学に関してさほど知識がない場合でも分かりやすく、理解しやすい。

◆細胞の設計図の話、フラフラ癖と浮気性、抽象化と具体化二つのアプローチ、日本の科学者の幸福度、織田信長の話など、面白い話がたくさんある。特に、私が面白かったのは終章の「神はいるのか」の話である。以前から頭の中にあった「神」に対する考え方のモヤモヤが解消された。

◆最後のページ、お二人の「コロンブスの卵たち」に対する思いから学べることは多い。本書は思考法の本だが、お二人の人柄がよく分かる本でもあった。私みたいに科学に興味がなかった人にも読んでほしい一冊だ。

「大発見」の思考法 (文春新書)

 満足度:☆☆☆ 付箋数:27

タイトル:「大発見」の思考法 iPS細胞 vs 素粒子

著者:山中 伸弥  益川 敏英

出版社:文藝春秋

ページ数:208

 

【編集後記】

今回は、読書は1冊のノートにまとめなさい 100円ノートで確実に頭に落とすインストール・リーディング (Nanaブックス)に書いてあったねぎま式読書ノートを参考にした。引用一つ一つに感想を書くスタイルである。こちらの方が引用した意味がはっきりと分かるのではないか。そして、すこし、改行を加えてみた。